ペンギーゴ!(挨拶)


『ロックマンX アニバーサリー コレクション』開発スタッフインタービュー、
前回前々回はオリジナルスタッフの方を交えての対談でしたが、今回から(から!?)は
Xアニコレ開発スタッフ陣に本作について、がっちり語っていただきました。

【田中の中】CIMG8026


プロデューサー:野中大三(文中では野中)
ディレクター:田中誠(文中では田中)
聞き手:ロックマン ユニティ ウッチー(文中では――)

一口に「移植」と言っても様々な要素がある、と言うのがワタクシ良く分かりましたよ。

ではどうぞ!


――今回は野中大三プロデューサーと、田中誠ディレクターに移植についてのエピソードを語っていただきます。移植作品の制作は、新規タイトルと違うところも多いかと思いますが、お二人はどのようなところを重要視されたのでしょうか?

田中 『ロックマンX』に限ったことではないのですが、カプコンのアクションゲームは基本的に手触りを重視していますよね。
ボタンを押したらジャンプする、レバーを入れたらキャラクターが動くという反応の部分が、こだわりを持って作られているんですね。
移植作品は、そこをおろそかにしてしまうとダメなんです。
とくに『ロックマンX』シリーズは、
「ここからジャンプしたら、この角に引っかかって上に上れる」というような場面がたくさんあるんです。その調整が少しでも狂うと、引っかからなくなってしまうわけです。


【田中さん】CIMG8053

▲田中 誠(たなか まこと):『ロックマンX アニバーサリー コレクション』ディレクター


――ゲームの遊びかたが変わってきてしまうのですね。

田中 そうですね。普通の人なら特殊武器を手に入れることで上れるようになる場所も、
テクニックのある人なら武器なしでも上れる
、ということがありますが、そういうことができなくなってしまうんです。


――そうなると、気づいた人は「えー!? なんだよ」となってしまいますよね。


田中 ええ、その通りです。
そういう部分を再現すること、それが僕の中で一番最初に掲げたことなんですね。『ロックマンX』シリーズの魅力として、ボスが強かったり、ハイスピードアクションであること、高いシナリオ性というのは知られていますが、僕の中ではこのキワキワなところを上っていってパワーアップができることも魅力だと思っています。

自分のゲームの腕前を実感できると同時に、満足度が得られますよね。
『ロックマンX』の『1』から『5』までは、その魅力が特に色濃く感じられます。
開発中はそのような細かな部分だったり、原作に近いアクション性が再現されているかなどを、QA(品質管理)チームや開発チームと一緒に1つ1つ検証していきました。

――そんな風に細かく検証されているとは。
自分たち遊ぶ側にしてみると、どうやって移植されているのか想像がつかないので……。

野中プロデューサーが以前言っていたのですが、多くの人にとって移植タイトルというものは、
「世の中には“イショクデキール”みたいな機械があって、そこにソフトを入れると移植ができちゃうんだろうくらいの感覚」ではないかと。

野中 それが普通の感覚かと思います。
ボタンをピッて押したら、今のハードに対応しているようなイメージというか。
原作がそっくりそのまま移植されているというイメージを持たれているからこそ、僕たちはオリジナルをしっかり再現しなくてはいけないなと思っています。

【野中】CIMG8051
▲野中 大三(のなか だいぞう):『ロックマンX アニバーサリー コレクション』プロデューサー、好きなイレギュラーはVAVA


田中 そうなんですよね。25年間『ロックマンX』を遊び続けている人に、
違うものだと思われてはいけないわけです。

――『ロックマンX』だったら、そんな熱烈なファンの方もきっといますよね。

田中 いまだにスピードランとかやられている方もいますよね。
そんなファンの方々を見ると、僕らも手は抜けないなと気が引き締まります。

――移植の作業としては、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか?

野中 まず最初は、バックアップデータ探しから始まります。
社内にモノがあるかどうか。見つかったら、田中さんの解析が始まるんですけど、これが大変なんです。

田中 解析作業はみんなでやるんですけどね。

――ちなみに、そのバックアップデータはあったのですか?

野中 秘密です(笑)。

――秘密かよ!

田中 いろいろ困りごとが出た件でしたね。

野中 バックアップデータがあったとしても、元通りに復元できるかというと、
タイトルによりけりで。
部分的に復元できなくなっていることもありました。

田中さんはグラフィック出身なので、絵で見ながら解析を進めていくのですが「あれ? 謎のエフェクトがある」とか、「誰が爆発したのか分からない」とか、よく困惑していましたね。
データとしては入っているけども、実際に使われていなかった場合もあるんです。

――それは判断に苦しみますね……。

野中 でも一番辛かったのは、プラットフォームが3世代にまたがっていることですね。

田中 元が3機種あって、それをさらに現行ハードのPlayStation4、Nintendo Switch、Xbox One、PCの4機種に向けて移植するわけです。
システム的に12本あるような形ですね。最初に8作品を移植するという話を聞いたとき、「現行の4ハード、さらに各言語、そしてイージーモードもつけると……?」と掛け算をしていったら
とんでもない数になって。

――作業工程を考えると恐ろしいですね。

田中 作業に取り掛かるに当たり、まずは社内にあるバックアップデータを洗い出して、使えるもの、そうでないものを整理していきました。

スーパーファミコンの作品の場合は、特殊なやりかたとしてプログラムで走らせたりもしているのですが、初代PlayStationや、PlayStation2のタイトルは、データを一度バラバラにして組み直しています。

――えっ、組み直すのですか?

田中 はい、今回は『ロックマンX』シリーズをイチから組み直しています。
一部、そのまま移植するものもあるのですが、組み直せる部分に関しては基本的に再構築して、アクションの手触りを高いレベルで再現しています。

手触りの部分の再現は、開発チーム、QA(品質管理)チームともに
確認を怠らないようにしていました。
QAチームのスタッフには『ロックマン』が好き、『ロックマン』が上手いという人を揃えてもらいましたね。

野中 そういう人材はなかなか手放せないですよね。
腕前が必要とされる検証もあったりするので、貴重なんです。

田中 メインプランナーの松浦(賢司)さんもそうなんですが、プログラマーの中にも『ロックマンX』が好きで、プレイの感覚にこだわっている方が多いですね。
それがこのチームの特徴でもあります。

CIMG8008



野中 検証といえば、昔の機材を揃えるのにも苦労したんですよ。
社内で昔の海外版PlayStationが動くハードというのが1台しかなくて。
その機材も経年でカレー色なっていましたからね(笑)。

――カレー色ですか(笑)。

田中 海外版のスーパーファミコンのSNESとかもそうでしたね。
移植データが組まれたら、オリジナルと比べて大丈夫かどうかチェックするのですが、開発チームだけじゃなくて、QAチーム側にも機材が必要になってきますし。

それで何とか探して購入したりもしました。
攻略本とかもかき集めて。カプコンのゲームですが、攻略法をすべて網羅している人間というのは社内でも少ないですし、シリーズ後期になってくると攻略も複雑になってきて。
それの確認のためにも、そういった資料が必要なりました。

野中 実際にプレイしてみないと、何か特別な仕様が入っているかどうかが分からないんですよね。

田中 ファイナルバックアップとして残されていたが、実はファイナルではなかったという罠もありました。

野中 サウンドデータも一部残っていなくて、製品版から音をリッピングしたそうですし。


――サウンドに関してコンポーザーの北川さんから聞いたのですが『ロックマンX6』って、音声をディスクから再生しているため、
同じくCD音源になっている音楽を同時に鳴らすことができない、つまりセリフとBGMが被るシーンは本体のメモリ上に内蔵音源を作って、MIDIファイルで再生していたという経緯があったそうです。(音質のいいSFCみたいなもの)
と言う事は、そのシーンのBGMは音を鳴らすデータのセットしか残っておらず
(見せてもらったのですが、短い音のデータと自分ではなんのこっちゃ分からないファイル)それを現在の機材で再現したとか。


田中 本当にデータの整理には時間がかかりました。
3ハードまたいでいると、データの形式も全く違いますから。


――ファンのみなさんも、その辺りは感じ取ってくださっているようで、「ついに1つのハードで全部が遊べる日が来た」と喜ぶ声も見受けられました。

野中 移植タイトルは手軽に遊べることはもちろんですが、やはり“当時の再現”ができなければいけないと思うんです。
自分が上手くプレイできたという経験、その記憶がある人は、それがまた再現できるということで移植版を手にしてくださるのだと思うんです。

ですから、僕らとしてはその再現を前提に移植しなければならない。
ただ、当たり前ですけどハードは当時と異なりますよね。
映し出しているモニターだって、変わっていれば雰囲気が違うでしょうし。
ハードにおいても、CPUがグラフィックを表示するまでの処理速度も違うし。

――確かに、プレイ環境が異なるのは避けられないですよね。

野中 細かいことですが、コントローラのボタンだってそうですよね。
現在はマルチプラットフォームが主流なので、どのハードで遊んでいただいてもそこまで大きな違いはないのですが、スーパーファミコンのタイトルは、スーパーファミコンのコントローラでしか遊ばなかったわけですから。


――当時の再現といえば、公開中のPVに寄せられたコメントの中に、「『ロックマンX』のオープニングステージで、ビーブレイダーが倒した後に落下してくるところの処理落ちも再現されている」というものも見られました。そこまでしっかり見ているファンの皆さんもすごいなあと。

ビー無礼だーX1a



野中 あそこは間違いなく100万人は見ているはずですから(笑)。

田中 その内の相当数の方が、25年間見続けてくださっているはず(笑)。

――そうかもしれませんね。公式コミュニティサイトのロックマンユニティを見に来られる方は、やはり濃いファンの方が多いのですが、皆さん遊び倒し過ぎて、さらに新しい遊びの提案をされていたりするんですよ。
サイコロを振って、出目によってキーコンフィグを変えてクリアできるか、とか。
セレクトボタンがダッシュになったりしているのに、それでも挑戦するという。

野中 おお、それはすごいですね。

――こんなに1つのゲームをやり込むってなかなかないことですよね。

田中 そうですね。25年も遊ばれていると、そんな別の楽しみかただったり、いかに早くクリアーするかというのが研究されていきますよね。
編み出された攻略法の中には、バグを利用するやりかたもあったりするんです。
イーグリードのステージでとんでもない移動の仕方があるのですが、そういったものは消さずに残しています。



野中 無印の『ロックマン』の後半などにはよく見られましたよね。
ロックマンって進化すると同時に、移動能力が上がりますよね。
ラッシュに乗るようになったり、空を飛ぶようになったり、壁を上るようになったり。
それを使って、通常なら行けないマップに進むことで高速クリアする手段もあるじゃないですか。
そこは大目に見ているというか、「そういうもの」として捉えています。

田中 もうプレイヤーさんたちの物になっていますよね。

野中 ある意味そうですよね。濃いプレイヤーの方にとっては、それが普通になっていて。
プレイ動画なんかを観ると裏技として使われていますよね。

――僕も「マグネットビーム、そうやって使うんだ」と驚かされることもありました。

野中 あれも、バスターと歩きだけだったら、普通は出ないはずじゃないですか。

――そこに行かないですからね。
あれもマグネットビームを使うテクニックが必要だったりはしますけどね。

野中 今回、新たなバグというのはないですけど、既存のものはほぼ残しています。でも、止まって進行不可能になったり、セーブデータが消えてしまうというものはないです。

田中 ええ、遊びで使える“想い出バグ”は残しつつ、安心してプレイできるようになっています。

――想い出バグですか(笑)。

田中 当然、バグの1個1個について、残すか直すかの議論はあったんですけどね。

――じゃあ、「これは修正しておこう」となった部分もあったのですか?

田中 先ほど出たような、プレイヤーの不利益になるものは取り除いています。
ちなみに、バグも含めて全てのパスワードが使えるようになっています。
スーパーファミコンのものも使えますよ。

――じゃあ、当時にメモを取っていれば、そのまま入力できると。
きっと保存している方もいらっしゃるでしょうね。


田中 プレイヤーさんが調べに調べ上げたバグパスワードも有効で、それを入れると壊れたキャラクターでプレイできたりとか。それも残していますよ。

――ええっ、それもいいんですか!? でもそうなると、品質管理チームのスタッフは大変だったのでは?

田中 そうなんです。まずバグが出たら、今回の移植で発生したものなのか、以前からあるバグなのかを判別しないといけないですから。それを調べるところから始まるわけです。

――そんなところにも、知られざる苦労があったんですね。
しかし、そのバグの判別だけでも大変なのに、新モードを入れちゃうなんて……。


野中 新モードを入れるという話を聞いたときは、たぶん田中さんのストレス発散の意味もあると思いました(笑)。


田中 移植するだけだと、スタッフのモチベーションが上がりにくいと思うんです。
やはり何かを作り出しているほうが楽しいだろうと。

それに、プレイヤーさんが喜ぶものを入れたいとなりまして。
それで、ボスを操作してボスと戦うというのを考えたのですが、これが思った以上に大変でした。


――Xチャレンジのお話は次回で詳しくお聞きしたいと思いますが、僕も初めて知ったときは本当にすごいモードを入れて来たなと驚きました。
また、新要素をいろいろ見せていただいた中で、『ロックマンX7』と『ロックマンX8』の高解像度化にもビックリしました。本当にキレイになっていますよね。

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田中 高解像度化については、最初実現できるかどうか分からなかったんです。
というのも、PlayStation2の画面の解像度アップを図ったときに、さまざまなところに絵の不具合が出て「直すには手間がかかりすぎる」となったんです。それをどう解決したかというと、

ズバリ、手間をかけました(笑)。

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――わはは、正攻法で手間をかけることを選ばれたと。

田中 当初はオリジナルの解像度で移植するという話になっていたのですが、プログラマーからデザイナーから、スタッフ総出でその不具合を1つ1つ直していって。

これにより解像度を上げることができました。
なぜここまでやったかというと、今回『ロックマンX』から『ロックマンX6』まで、フィルターで絵が滑らかになるじゃないですか。
それで『ロックマンX7』、『ロックマンX8』だけキレイにならないという話はさすがにナシだと。
そのままだったら現行ハードでプレイする意味合いがあまり感じられないとなりまして。


――だから手間がかかることになっても、ベースの絵のパワーアップを図ったのですね。


田中 実は一度、試しに解像度を上げてもらったものを見て、そこから戻れなくなってしまっただけなんですけどね(笑)。

――僕も見比べてみたとき、こんなにも絵の情報量が眠っていたなんてと驚きました。


野中 高解像度になると、奥行きや質感なんかもよく出ていますしね。


田中 オリジナルの作りがしっかりしていたからこそです。
ですから、テクスチャなどは特にいじらずに、解像度を上げて不具合を直すだけでいいグラフィックになったんです。
自社製エンジンのMTフレームワークが持っている、絵を少し滲ませる機能だけでテクスチャもキレイに見えているので、大きく手を入れることはしていません。

野中 大画面だと余計に差が分かりますよね。
草木が抜けているところとかに差が出るんでしたっけ。

田中 そうです。アルファ……半透明の部分の見えかたがちょっと違うだけで、あとは高い再現度を保てていると思います。
こういったフィルタ機能も含め高画質の良さを味わえる一方で、ドット絵の良さもあると思うので、『ロックマンX』から『ロックマンX6』まではオリジナルの画面でプレイできるようにもしています。


――本作ではそのフィルタ機能や高解像度化だけでなく、イージーモードが設けられていますね。こちらを導入されたきっかけというのは?

かけだしハンターモード設定

田中 プランナーの松浦さんが名づけた“かけ出しハンターモード”ことイージーモードですが、これは『ロックマンX』が難しいから敬遠されていて、それを解消するという意味合いで入れたのではないんです。

そもそもスーパーファミコン時代のアクションゲームの難易度って、今とはちょっと違うんですよね。カプコンのゲームに限らず、さまざまな横スクロールアクションゲームがそうであって。『スーパーマリオブラザーズ』だってめちゃくちゃ難しいですよね。

今回、移植するに当たり、もちろん難易度の再現は念頭にあったのですが、『ロックマンX』はもう25年も前のゲームになるわけで、シリーズを初めて触る人も当然いらっしゃるだろうと。
その方たちにも、まずは触ってみてほしいという想いで入れました。

『ロックマンX』から『ロックマンX3』のイージーモードに関しては、エックスの防御力が上がっていて、受けるダメージ量が軽減されています。

『ロックマンX4』から『ロックマンX8』ですと、通常なら針に触れたり、奈落に落下したら力尽きてしまいますが、イージーモードでは死なないようになっています。
しかも、ゲームの途中でもイージーモードに切り替えられます。

――えっ! それはすごく寛大な措置ですね。

野中 でも最初はイージーモードを入れるのは止めようかという話もあったんですよ。
タイトルが多いし、ハードをまたいでいるから簡単にはいかないよと。
ただ、作品の売りとしては欲しいなと。

『ロックマン クラシックス コレクション 2』にも防御力UPモードが入っていたし。
そこでやっぱり、イージーモードを追加しようとなったんですが、やるならちゃんと作ろうと。
しかしですね、作ってQAチームにチェックしてもらったところ“かけ出しハンターモードでかけ出せない事件”というのが起きまして(笑)。

全然易しくないと。エックスがちっとも進めないと。
だから、もっと作品ごとの調整が必要だとなりまして。

――先ほど田中さんがおっしゃられたように、『ロックマンX』から『ロックマンX3』はダメージを減らすだけでも何とかいけたけど、それ以降の作品はそれだけじゃまだ足りなかったと。

野中 そうですね。特に『ロックマンX5』と『ロックマンX6』ですね。

――歯応えありますもんね。

田中 メニュー画面で“かけ出しハンターモード”をオンにすると、イージーモードになります。
すると、エックスが攻撃を受けてもほとんどダメージがないのが分かるかと思います。
そして、穴などに落ちると……。

――あ! 転送のエフェクトが出て戻ってきましたね。

田中 復帰直後は体が点滅していますが、落下のダメージは受けていません。
針の上は、少しダメージを受けますが、死にはしないです。
こんな感じで徹底して易しくしています。

――これなら初めてプレイする人も、かけだせます!

田中 Xチャレンジモードも、イージーとノーマルで差があるのですが、
これもものすごくイージーを易しくしています。

――エックスシリーズ未経験の人やアクションゲームが苦手な人にもぜひプレイしてほしいですよね。

田中 そうですね。彼氏が彼女に「ちょっとプレイしてみる?」と誘うときにもいいですよ。


野中 「針の上、歩いても大丈夫だよ」って(笑)。

――そんなシチュエーションになれるなら、ぜひとも実践していただきたいですよね。

田中 でも、当初はここまで易しくするとは僕も考えていなかったんですよ。
でもプランナーの松浦さんが「ココまでやらないと易しいとは言えない」と。
ただ、それにともなってチェックの項目も増えたんですよね。
針の上が歩けちゃうわけですから、通常なら行けないところへも辿り着けちゃう。
またそこで出る不具合を潰していくことになって(笑)。

――ああん、ここでもまた面倒なサイクルが!

田中 逆に、穴に落ちても平気なはずが、死んでしまうところもあって。
そこはちゃんと直しました。

――易しくするのも大変なんですね。
でもプレイヤーにとっては至れり尽くせりだと思います。

野中 初心者のためだけでもないんですよ。
当時、がんばってクリアした人は自分の腕に自信があると思うのですが、今、同じ努力ができるかというと、なかなかできないと思うんです。もちろん、選ぶのはプレイヤーさんですから、イージーモードを使わなくたっていいんですけど……。

――確かに当時のようにうまくプレイできないとき、ジレンマを感じてしまいますよね。


野中 それに本作は、8本分遊べるわけですから、全部クリアしようとすると相当のパワーが必要になりますし。そういった点からも、イージーモードがちゃんと易しくなっていないとね。

田中 『ロックマンX6』なんか、床にも天井にも針がついているじゃないですか。
結構神経を使いますよね。

野中 針は一撃死なんですよね。それなのに、ジャンプでもダッシュでも行けない先まで針が置かれていたり。「誰がよけられるの、この針!」と思うくらい周到ですよね。

田中 今どきの体力制のアクションゲームで、針の一撃死ってほどんどないですよ。
体力制なのに一撃死なんて設定のゲームなんて珍しいんです。

――『ロックマン』だと普通のことなんですけどね。

田中 冷静に考えたら「なんでエックスをここまでパワーアップさせたのに、最後に針で殺しにかかるんだ」と思うわけです。

こんな無惨なことはないですよね。僕を含め、『ロックマン』ファンは、この厳しいルールに慣れ過ぎて麻痺しているのかもしれません。


野中 フットパーツで壊せたらいいのにね。
針はフットパーツで壊せる物よりも硬いってことですよね。

――そんな頑丈な針も、かけ出しハンターモードなら平気ですからね。
ところで、ゲーム中のセーブはどのようになっていますか?


田中 セーブに関しては、ほぼオリジナルのままです。でもスーパーファミコンの作品は、パスワードだけでなく、パスワード表示だけでなく、パスワード内容自体をセーブする機能も実装しました。
ですので、簡単に続きから再開できます。


■25周年タイトルとして

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――本作は移植作であると同時に、25周年を記念したタイトルでもありますね。
野中プロデューサーとしては、いろんなアプローチを考えられたかと思うのですが……。

野中 『ロックマンX』というコンテンツは、25周年と言いつつも、ゲームがリリースされ続けた期間としては10年くらいなんですよね。

比較として無印の『ロックマン』を見てみると、当時のプレイヤー層としては小学生2年生くらいの子が中心だったかと思うんです。

そこから10年経ったら、18歳。まだ日常的にゲームで遊ぶ世代ですよね。
一方、『ロックマンX』はもう少し上の年齢層を対象に作られていますよね。
大体13~14歳くらいから『ロックマンX』デビューすると。
でもそこからすぐ思春期を迎えて家庭用ゲームから離れる時期がやって来る。
そういう要素もあったりして、当時からずっと遊んでいる人が少ないんですよね。

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――ファン層がバラけているのには、対象年齢も影響していたと。

野中 この25年間で『ロックマンX』シリーズに触れた人たちは、いろんな想いを持っていて、一概にゲーム8作品だけが響くわけではないのだろうと考えました。

例えば、『ロックマンX3』や『ロックマンX4』の時期は、カードダスもヒットしていたり。
それに『ロックマンX』シリーズは、デザイン性も評価されているんですよね。
ここ5~6年にホビーアイテムの展開が増えています。

――確かに、ここのところグッズも人気が出ています。

野中 そこで、どの切り口であれ、『ロックマンX』に触れた人の想い出に刺さるようにしたいと。
そこから「周年タイトルなら、このコンテンツは欲しい」と構成していったんです。
その頃からタイトル名も『クラシック コレクション』ではなく、『アニバーサリー コレクション』でいこうとなりました。

――“アニバーサリー”というタイトルには、そんな意味が込められていたんですね。

野中 ファンの方のスタイルって本当にさまざまで、例えば『ロックマンX』のフィギュアが好きで「VAVAかっこいい」と気に入ってくださっていても、ゲームはプレイしたことがないという方もいらっしゃったり。

そんな未経験の方にも手に取っていただいて、楽しんでもらうにはどうしたらいいか、そういった部分も踏まえて25周年タイトルを作っていきました。

――野中さんのそんな想いが、ミュージアムなどのアーカイブの充実に繋がっていったわけですね。

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野中 そうですね。プレイヤーさんがシリーズにどこで触れているのか分かりませんから、いろんなコンテンツを拾っておきたいと思ったんです。

今回収録したオリジナルアニメの『The Day of Σ』などはぜひ観ていただきたいですね。
これは『ロックマンX』のリメイク作である『イレギュラーハンターX』に収録されたアニメなんです。『アニバーサリー コレクション』には、『ロックマンX』が入っていますので、同内容である『イレギュラーハンターX』は除いているのですが、『イレギュラーハンターX』にしか入っていなかった『The Day of Σ』は入れなくちゃいけないよね、となりまして。

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田中 『The Day of Σ』は、『ロックマンX』の前日譚なんですよね。
『ロックマンX』シリーズの歴史を紐解くには重要なポイントになっています。

野中 よくできているアニメなんですけどね。
セル画で描かれたペンギーゴとかイイですよ。

田中 本当ですよね。さっきファンの年齢層の話がありましたが、昔『ロックマンX』から『ロックマンX3』をプレイされていた方でも、『The Day of Σ』は観ていなかったりして……。
今回の『アニバーサリー コレクション』で観ていただくことで、「シグマってこんなキャラクターだったんだ」と、思っていただけるかと。他にもPVシアターや、ミュージックプレイヤーも収録されていて、『ロックマンX』の歴史を紐解くコンテンツという『アニバーサリー コレクション』の側面をしっかり担ってくれていると思います。

――またこれらのアーカイブはデジタルで収録されているので、劣化せずに残るじゃないですか。そこも重要ですよね。

田中 そうなんですよね。グッズカタログなんかも、担当スタッフがバンダイさんの倉庫にお邪魔して、おもちゃを引っ張り出しては都内のスタジオで撮影していました。

野中 グッドスマイルカンパニーさんや千値練さんなどで作っていただいた近年のグッズは、デジタルで資料が残っているんですが、バンダイさんのメガアーマーとか、カードダスは1994年あたりなので、そういう資料が残っていないんですよ。

あるのは倉庫のサンプルだけなんですが、それでもこちらのお願いを聞いていただいて、貸出していただいて。本当に担当の方々には助けていただきました。
うれしいことに、担当者さんも『ロックマンX』世代ということで、がんばっていただいて。ご協力には本当に感謝しております。

――皆さんのご協力がこうして貴重な資料として形になっているんですね。

野中 その倉庫は栃木にあるんですけど、グッズが見つかる度にスタッフが伺っていましたね。
毎度毎度、大変だったと思います。

グッズカタログ


田中 そもそも、グッズカタログをやりたいって言い出したのは野中Pでしたよね。

野中 周年の記念なので……。
おかげで日本にそれ1個しか存在しないであろうグッズも撮影できました。
プラキットとかも、その1個だけしかないから組み立てられないんですよ。
そこは箱の絵になっていますけど、そういった貴重なものも網羅するようがんばりました。

――グッズカタログというのは今までなかったコンテンツですから、うれしいですよね。でも、これが定番化されてしまったら、後々大変なことになりそうですね。

野中 他のタイトルからも怒られるでしょうねえ……。

田中 まあでも、ここまでやっていいと言われるタイトルもあまりないでしょうね。

――そのほかに、大変だった出来事や、移植の壁となったものはありましたか?

野中 権利まわりですね。SFC版『ロックマンX3』まではいいんです。
ゲームメーカーが自力で作って売っていた時代ですから。

問題は『ロックマンX4』からの、いわゆる大容量時代ですよ。
メディアがCD-ROMになって、ボイスも歌も、アニメも入れられるようになって。
ゲームが総合エンターテインメントになった時期です。

純粋にゲームメーカーが作るだけではなく、いろんな方面にご協力をいただいて作られるようになったと。今だったら当たり前のことですけどね。
しかし、黎明期は契約書もずさんだったんですよ。
双方ともにね。「なんで入っているか分からない」とか、そんなのが多かったですね。

田中 「これ誰の声だろう」とかね(笑)。

野中 お客さんにとっては、ゲームの本編だけじゃなくてそういう演出部分も大事な想い出じゃないですか。
でも、それを再現するためには出演者さんの許可もいただかなくてはいけない。
ですから、いろんなところを訪問してお話をしました。
ただ、20年以上前のことですから、声優さんで亡くなられている方もいらっしゃいますし、所属先が変わっている方もいます。

歌手の方でも今は歌っておられないという方もいました。
それに海外だと『Megaman』もしゃべっている。
収録をした会社が日本版と異なっていることもありました。
当時の担当者が先方にもカプコンにもいなかったりね。

――まさに大きな壁ですね。

野中 ええ。それらを入れないという選択肢もありますが、そこはがんばって入れることにしました。細かい話をすると『ロックマンX』シリーズの中には、ずっと同じ声優さんが演じてらっしゃるキャラクターもいますよね。
でも、作品によって、そのとき所属していた声優事務所が違っていたりすることもあって。
でも契約は当時所属の事務所で……とか。そこをひたすら遡っていきましたね。

田中 もう、捜査みたいですよね。野中さんは時間探偵と化していました(笑)。

野中 去年なんかね、開発チームが「2017年、がんばるぞー!」って言っている横で、僕は独り、1993年を生きていましたね。
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田中 何か1個でも承諾が得られなかったら発売できませんからね。
「その捜査、本当に終わるのか?」と折からずっと言われていましたよね。

野中 こっちとしても、返事は「何とかします」の根性論しかなかったですけど(笑)。
でも、それで何とか無事に終えられました。ただ、『ロックマンX3』オープニング曲だけ入っていないんですけど。これはオリジナルであるスーパーファミコン版の移植となったためですね。

――それでも曲がちゃんと聴けるというのは、本当に重要なことですよね。

野中 ええ、ちゃんと入っていますから! これも各方面の方々のご協力のおかげですね。この場を借りてお礼を言っておかないと。

野中&田中 ご協力いただいた皆さま、メーカーさん、本当にありがとうございます!


はい!いかがだったでしょうか?
色々な人が関わって完成した本作、長く楽しんでいただけると嬉しいです。
楽しむ、と言えば今回新モードとして「Xチャレンジ」が遊べるのですが、
次回はこの「Xチャレンジ」がいかにして生まれたのか?
のお話を文中に何度か登場した松浦プランナーを交えてお送りします!

【松浦さん】CIMG8072
▲「Xチャレンジ」のカギを握るのはこの方!松浦さんです

=オシラセ=



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